本情報は11月15日現在のものであり、今後の流行状況等により、制度や方針が変更されることも十分考えられます。予防接種を検討される場合は、事前に厚生労働省・新型インフルエンザ対策関連情報(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html ) をご参照ください。
【定義・現況】
Q1. 新型インフルエンザとは?
A. 新型インフルエンザとは、人から人へと容易に感染する能力を得た新種のウイルスによって生じるインフルエンザのことをいいます。人にはこのウイルスに対する免疫(=抵抗力)が備わっていないため、感染により生命や健康に重大な被害を生じる危険性があります。また、新種のウイルスには『変化しやすい』という特徴があり、人から人へと感染を繰り返していく過程で変異を重ね、より毒性の強いウイルスに生まれ変わることもあります。
Q2. 現在流行している新型インフルエンザの特徴は?
A. 現在、世界的に流行している新型インフルエンザ(A/H1N1型)は、人から人へと伝染する感染力こそ強いものの、感染者の大半は軽症のまま回復しており、その毒性は冬に流行する通常の季節性インフルエンザと同程度であると考えられています。ただし、糖尿病や喘息といった基礎疾患がある場合や妊娠している場合、さらに小児は重症化することもあるため注意が必要です。
Q3. 新型インフルエンザと鳥インフルエンザの関係は?
A. 新型インフルエンザ(A/H1N1型)の発生に、鳥インフルエンザ(A/H5N1型)が関与したという事実は認められていないようです。ただし、今後この2種類のウイルスが同じ人ないし動物に感染することにより、その体内でウイルスが影響し合い、結果として新種のウイルスが生まれる可能性は否定できません。さらなる新型インフルエンザの発生を阻止するためにも、感染予防が大切であると言えます。
Q4. エジプト国内での新型インフルエンザ発生状況は?
A. 11月15日現在、国内で2666人の感染者、8人の死者が確認されています。このほか、検査を受けることなく回復した感染者が多数いるものと考えられ、実際の感染者数は予測がつきません。11月に入り、徐々に感染の拡大傾向が認められています。これから冬に向けて更にウイルスの活動が活発になるため注意が必要です。
Q5. 新型インフルエンザの症状は?
A. 突然の高熱、全身倦怠感、咳、鼻水、筋肉痛、咽頭痛など季節性インフルエンザに類似した症状に加えて、下痢や嘔吐といった消化器症状を伴うことが多いようです。これらの症状はウイルス感染後1~3日目に現れることが多く、遅くとも1週間以内には何らかの症状が出ると言われています。
【診 断】
Q6. 新型インフルエンザと季節性インフルエンザを見分ける方法は?
A. 症状から判断することはできません。これまでは流行地への渡航歴や感染者との接触歴がポイントになっていましたが、すでに感染者がどこにいてもおかしくない状況に変わっています。疑わしい症状が認められた場合は、かかりつけの医師や大使館医務室に相談してみてください。
Q7. 新型インフルエンザの診断はどこでできますか?
A. 新型インフルエンザの診断は、鼻やのどから採取した検体を保健省中央研究所といった高度な検査機器を有する検査機関に送って行われます。しかし、一日にできる検査数が限られているため、まずは総合病院や開業医で新型インフルエンザウイルスが属するA型ウイルスに感染しているかを検査し、陽性反応が認められた場合のみ新型かどうかの精密検査を行うことになります。検査を希望される場合は、院内感染予防のため、事前に検査の可否ならびに受診時間と場所を医療機関に確認の上、マスクを着用して受診してください。なお、11月15日現在、精密検査は政府指定病院でのみ行われていますが、近いうちに私立総合病院等でも受けられるようになる見込みです。その場合の費用は1000~1500LEになるようです。
【治 療】
Q8. 新型インフルエンザの治療は?
A. 新型インフルエンザの治療は、季節性インフルエンザと同じく、各症状に対する治療(対症療法)と抗ウイルス薬(タミフルやリレンザ)の投与が基本になります。抗ウイルス薬は、発症後48時間以内に服用を開始することでウイルスの増殖を抑えることができます。
Q9. タミフルをエジプト国内で入手することは可能ですか?
A. これまで、タミフルは政府指定病院でのみ投与され、一般病院や薬局で入手することはできませんでしたが、先頃法改正がなされ、今後一般病院等においてもタミフルを投与ならびに入手することが可能になりそうです。ただし、11月15日現在、その開始時期など具体的な方針は決まっておりません。
なお、カイロ市内にある一部の薬局でタミフルが販売されているようです。これらのタミフルは1箱300~500LEの高値(日本での薬価は約3100円)で販売されており、政府未公認の流通ルートで入手されたものと考えられます。よって、その製品の安全性は保証されていません。
また、日本で購入することも可能ですが、その場合は処方箋が必要です。事前に最寄りの医療機関へご相談ください。予備薬として購入する場合は、健康保険の適応はなく、自費になります。
Q10. エジプトの病院で日本人がタミフルを投与してもうらことは可能ですか?
A. 現時点では可能です。これまでエジプト国内で確認された新型インフルエンザ感染者および疑い症例に対して、その国籍等に関係なく、政府指定病院でタミフルの投与が行われています。ただし、今後感染者が急増した場合にどうなるかの予測はつきません。
【予 防】
Q11. 新型インフルエンザを予防する方法は?
A. 新型インフルエンザの感染経路としては、季節性インフルエンザと同じく、咳やくしゃみにより放出されたウイルスを吸い込むことによって生じる飛沫感染と、ウイルスが付着したものに直接触れた手を口元や目、鼻にもっていくことで感染する直接感染が考えられており、マスクの着用や手洗い、うがいが有効であると言えます。また、必要のない外出や人混みを避けることも大切です。なお、予防接種もすでに優先対象者から接種が開始されています。
Q12. 新型インフルエンザの予防接種は必要ですか?
A. 新型インフルエンザに用いられるワクチンは、季節性インフルエンザと同じ『不活化ワクチン』というタイプのものです。不活化ワクチンはウイルスの死骸から作られており、生きたウイルスから作られる生ワクチン(はしか、BCG、ポリオなど)に比べ、副作用が出にくいといった利点があるものの、獲得できる免疫(=抵抗力)が弱いという弱点があると言われています。予防接種により感染を防げるだけの免疫が得られる確率は7割程度と考えられており、予防接種を受けてもインフルエンザにかかる可能性を完全に除外することはできません。しかし、予防接種には重症化を予防する効果も認められています。新型インフルエンザ流行時に大切なことは、何よりも生命を守ることであり、それはすなわち重症化を防ぐことです。感染は阻止できなくとも、重症化は避けられるという点から、予防接種を受ける意味は十分あると考えます。
Q13. 新型インフルエンザのワクチンは安全ですか?
A. 日本国内で生産されている新型インフルエンザ・ワクチンは、季節性インフルエンザ・ワクチンと同じ製法で作られており、安全性も同等であると考えられています。季節性インフルエンザ・ワクチンの接種により後遺症が残るような重い副作用が起きる確率は100万人に1人。この確率を低いと考えるか、高いと考えるかはなかなか難しい問題です。
ちなみに、厚生労働省の発表によれば、臨床試験として200人の健常者に新型インフルエンザ・ワクチンを接種したところ、約半数に注射部位が腫れるなどの軽い副作用が認められたほか、アレルギーショックと全身性の発疹が1名ずつ確認されたとのことです。
Q14. エジプト国内の医療機関で予防接種を受けることは可能ですか?
A. 少なくとも今年度中に接種を受けることは難しいだろうと思われます。エジプト政府は今年8月までに500万人分のワクチンを海外から購入する予定でしたが、ワクチンの確保ができず、これを来年3月までの目標に変更しました。新型インフルエンザ・ワクチンは世界的な不足状態にあり、この新たな目標も達成できるかどうか現時点ではわかりません。
Q15. 大使館の医務室で予防接種を受けることは可能ですか?
A. 新型インフルエンザ・ワクチンは、厚生労働省が定める受託医療機関でのみ接種が行われることになっています。大使館の医務室はそもそも医療機関でないため、日本からワクチンが送付される予定はなく、またエジプトの法的制限により、医務室へワクチンを持参されても接種することはできないとのことです。
Q16. 新型インフルエンザの予防接種はどこで受けられますか?
A. 国ごとに接種計画が異なるため、外国で予防接種を希望される場合は、接種の可否を含め、その国の接種計画を確認していただく必要があります。
日本では、各市町村にある受託医療機関で予防接種を受けることが可能ですが、感染や重症化の危険性を考慮して優先的に接種する対象者が定められており、ワクチンの流通状況を踏まえ、優先対象者から順次接種が行われることになっています。厚生労働省が発表した大まかな接種計画は以下のとおりですが、これから判断すれば、健康な成人に対する接種開始時期は来年3月以降になるものと思われます。なお、詳細な開始日程は都道府県毎に決定されます。
10月下旬~ 医療従事者
11月上旬~ 妊婦+最優先の基礎疾患を有する人(=重症化しやすい持病を有する人)
11月中旬~ 最優先以外の基礎疾患を有する人+1歳~小学校3年生
12月下旬~ 1歳未満の子を持つ保護者+小学校4~6年生
1月上旬~ 中学生
1月下旬~ 高校生に相当する年齢の人
2月下旬~ 65歳以上の高齢者
Q17. 優先接種対象者であることは、どのように証明すればいいですか?
A. 妊娠している場合は母子健康手帳、基礎疾患を有する場合は医療機関が発行する優先接種対象者証明書、1歳未満の子を持つ保護者は母子健康手帳ないし住民票が必要になります。その他は、健康保険証や住民票、学生証、運転免許証など年齢を証明できる書類を提示することで接種が受けられます。
Q18. 日本国籍を持たない人でも、日本で予防接種を受けることは可能ですか?
A. 厚生労働省によれば、日本国籍がなくても、日本に在住していて、かつ(優先)接種対象者であると認定されれば、接種を受ける事は可能とのことです。詳細は居住地の自治体にご確認下さい。
Q19. エジプトの医師によって記載された優先接種対象者証明書は有効ですか?
A. 厚生労働省に問い合わせをしたところ、外国人医師が優先接種対象基準を理解した上で記載しているかどうかを確認できないため、最終的には受託医療機関の医師に判断が委ねられるとのことでした。接種を検討される場合は、事前に希望する受託医療機関の医師に相談してみて下さい。
Q20. 予防接種は何回受ければいいのでしょうか?
A. 11月15日現在、健康な成人、妊婦、基礎疾患を有する者、65歳以上の高齢者は1回で終了です。一方、基礎疾患を有する者で、著しく免疫機能が低下している場合は2回接種を検討し、1歳~高校生も原則2回(1~4週間隔)の接種が必要です。ただし、現在実施されている臨床試験や海外のデータによっては、今後接種回数が変更される可能性もあります。
Q21. 予防接種にかかる費用は?
A. 厚生労働省が定めた接種費用は、1回目が3600円、2回目は2550円ですが、2回目の接種を1回目と異なる医療機関で受ける場合は、2回目も3600円になります。なお、市町村によっては、年齢や収入によって負担軽減措置をとっている場合があります。詳しくは居住地にある市町村役場にお問い合わせ下さい。
Q22. ワクチンの効果はどれくらい持続しますか?
A. 季節性インフルエンザのワクチンと同じく、接種2週間前後から有効な免疫が得られ、約5ヶ月間持続すると言われています。ただし、十分な免疫が得られるかどうかは個人差があります。
Q23. 妊娠中や授乳中に予防接種を受けても大丈夫ですか?
A. これまでインフルエンザ・ワクチンの接種により、先天異常の発生頻度が増加したという報告はなく、妊娠中でも予防接種を受けることは可能であると考えられています。ただし、妊婦と胎児の健康が前提であり、接種にあたっては担当医に事前相談をして下さい。
また、授乳期間中のワクチン接種にも問題はないとされています。母乳を介して乳児に影響が及ぶこともないと考えられています。同様に、母親がワクチンを接種しても、母乳を介して乳児に直接的に免疫が獲得されることはありません。
Q24. 新型インフルエンザに感染した人も予防接種が必要ですか?
A. 新型インフルエンザに感染して何かしらの症状が認められた人は、すでにウイルスに対する免疫が獲得されていると考えられるため、予防接種を受ける必要はないとされています。他方、新型インフルエンザの診断には、PCR検査といった高度な検査が必要です。こうした検査を受けていない場合や感染の有無が明確でない場合、希望すれば予防接種を受けることは可能です。
Q25. 季節性インフルエンザの予防接種は新型インフルエンザにも効果がありますか?
A. 予防接種の効果についてはいろいろな説が出ていますが、季節性インフルエンザの予防接種は、今回の新型インフルエンザに対して有効ではないというのが現時点でのコンセンサスです。
以 上
カイロ日本人会